「習慣化は、やる気がある人が勝つ」
そう思っている限り、たぶんずっとしんどい。
続かないとき、人はだいたい「自分の意志が弱いせいだ」と結論づけてしまいます。反省は深くなるのに、仕組みは変わらない。すると、次の挑戦も同じ場所でコケる——この自己反省ループが、いちばん消耗します。
そんなループに対して、問いを差し替えてくれるのが継続する技術です。
続かないのは、意志の問題ではなく「設計」の問題では?
この本(そして同名アプリ)が提示する答えは驚くほどシンプルで、「習慣3原則」に圧縮されています。
これらを軸に僕たちの長年の悩みをズバッと解決してくれる本・アプリです。
しかも面白いのは、これが「理屈の本」だけで終わらないところ。
三日坊主の主人公と継続博士の語りで進むストーリー形式。こちらの情けなさも、怠けも、言い訳も、ちゃんと置き去りにしない。理論だけで正解に回収しないから、読後感が妙に納得するんですよね。
本全体を通じて、「事実」→「対策」→「人間だもの」
この順で話が進むから、「わかるけどできない」を責めずに、次の一手を残してくれます。
この記事ではまず書評として「習慣3原則」を整理し、そのあとで僕自身がこの本から連想したこと(環境・投資)を書いていきます。
『継続する技術』とは?
『継続する技術』は本として読めるだけでなく、同名のアプリとしても運用されています。
本で原則を理解し、アプリで“忘れない・ゼロにしない”を実装する—理解と運用がワンセットになっているのが強みですね。
iPhone : apps.apple.com
Android : https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.bondavi.consistency&hl=ja
しかも本書は、アプリ運用で蓄積されたデータや実装知見を背景に、継続のコツを「習慣3原則」という形に圧縮しています。出版社紹介でも「毎月12,000人以上が30日継続に成功」「60分以上の目標は94.3%挫折」「リマインダーで成功率4.47倍」「原則を守ると30日継続成功率8.23倍」など、データを前面に出ています。
(参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001375.000018193.html?utm_source=chatgpt.com
ここで大事なのは、続ける/続けられないを精神論で処理しないという姿勢。
続かなさを“性格”のせいにせず、ルールと環境(=設計)の話に持っていく。これがこの本の核です。
- 続ける/続けられないは、精神論ではなく設計(ルールと環境)で扱える
- その設計を、誰でも使える最小セットにしたのが「習慣3原則」
書評パート:『継続する技術』の中核:習慣3原則
原則1 すごく目標を下げる(目標は5分以内)
5分って、正直ナメたくなる長さです。
でも本書が狙っているのは成果を出すことではなく、行動を始めたという事実です。
人が続けられない最大の理由は、能力不足よりも「開始コストが重い」こと。
「よし、やるぞ」と思った瞬間に、脳内で勝手に始まるんですよね。
- ちゃんとやるなら30分は必要
- 今日は集中できない気がする
- どうせ途中で途切れるし…
だから最初から、“軽く始める”ように設計する。
例えばブログを習慣化したい人だった場合・・・5分でこんなことができる
- タイトル案を1本だけ
- H2を3つだけ
- 箇条書きを5個だけ
- 冒頭200字だけ
重要なのは「本文は書かない(でもいい)」と決めること。本文を書き始めると、負担が倍増し、完璧主義と時間見積もりの暴走しがちです。
ただ、5分を過ぎてもまだやる気がある日は続けてOK !
無理に終わらせることはせず継続してもいいよ。というゆるさも確保しておきましょう。終わらせる義務まで背負わない。
このゆるさが、長続きの土台になります。
原則2 動けるときに思い出す(きっかけトリガーを多数用意する)
「夜にやる」「朝にやる」みたいな時間指定は、一見まっとうに見えるけど、案外負けやすいです。
理由は単純で、同じ“夜”でもコンディションが違いすぎるからです。仕事の疲れ、予定のズレ、気分の波。そこに「やるべき」を乗せると、だいたい先延ばしの癖が勝ちます。
『継続する技術』がここでやっているのは、気合の勝負を降りて、「思い出し方」を設計することです。
つまり、やる気が出たらやるのではなく、やる気がなくても思い出せるようにする。
「思い出す」を3種類に分解する
原則2の肝は、トリガー(引き金)を複数持つことです。大きく分けると3つ。
- 時間トリガー:◯時になったら思い出す
- 場所トリガー:その場所に行ったら思い出す
- 行為トリガー:ある動作の直後に思い出す
本の中では、リマインダー(時間指定)も出てきます。これは「忘れる」を機械で潰すという意味で強いです。
ただし、時間トリガーだけだと、その時間に動けない日が必ず出るので、そこで折れないために 場所・行為トリガーを重ねるのがコツです。
IF-THENプランニングは「行為トリガー」を強化する道具
心理学でよく使われるのが、IF-THENプランニング(実行意図)。
- If(もし):状況Yになったら
- Then(そのとき):行動Zをする
という条件文で、行動を“予約”してしまう考え方です。
ポイントは「やる気が出たら」ではなく、条件を満たしたら反射で開始できる形にする、という発想です。
ブログ5分習慣に落とすなら、こう書くと強い
コツは、Then(行動)を“軽く・具体的に・迷いなく”すること。すると強いです。
時間トリガー(リマインダー)例
- 21:30になったら → 5分だけ「見出しを3つ」
- 12:10になったら → 5分だけ「タイトル案を1本」
場所トリガー(カフェ/机/図書館)例
- カフェに座ったら → 冒頭200字だけ
- 図書館に入ったら → ネタを箇条書き5個だけ
- 自習室に着いたら → 既存記事の誤字を1つ直すだけ(例外日でもゼロ回避)
行為トリガー(IF-THEN)例
- 歯磨きが終わったら → メモ帳を開く(開くだけでもOK)
- コーヒーを淹れた直後に → タイトルを1本書く
- PCを開いたら → H2を3つ置く
- YouTubeを開きたくなったら → 先に30秒だけ「次の見出しを1行」(誘惑をトリガーに変える)
ここでの狙いは「思い出す」ではなく「迷わない」
人間って、頭の片隅に「やらなきゃ」が残ってても、結局やり始めない。
その原因は意志よりも、だいたいこの2つです。
- 忘れる(思い出せない)
- 迷う(何をやるか決まってない)
だから、原則2は「思い出し」の設計だけじゃなく、実は “何をするか”を固定する設計でもあります。
リマインダーで思い出す → 行為(IF-THEN)で行動を自動化する → 場所で意識切り替え
この三段構えにすると、だらけやすい日でも再現性が出ます。
原則3 例外を設けない(ゼロの日を作らない)
ここが一番大変だと実感するところです。習慣化をしくじる人にとって最難関の箇所だと思います。
本書が言う「例外を設けない」は、量の例外を禁ずるという意味ではありません。
やらない日(ゼロの日)を作らないための設計を持て、という意味です。
だから例外日は30秒でもいい。守るべきは努力量ではなく、連続性のほう——ここを取り違えないのが原則3のコツです。
実際にさぼった日があると下記のような統計結果があるのです。
- A:1日サボると「それを境に二度とやらない」人が69.1%(本の一節紹介記事)
- B:1日でもサボると「結局30日以内に挫折する」人が92.5%(出版社紹介)
Aは“再開不能率”、Bは“30日スパンで見た挫折率”。
1日空くと「再開できない」人が多い。
たとえ再開しても、30日トータルではほとんどが崩れる。
だからゼロの日を作らない設計が最優先になる。
例えばブログ版の「例外日ルール」はこれで十分。
- 通常:5分
- 例外日:30秒でOK
- メモ帳を開いて「次に書く見出し」を1行だけ
- 既存記事を1行だけ直す(誤字でOK)
- タイトル案を1個だけ
目的はただ一つ。
量ではなく連続性を守る。
日数リセットルールは「アプリの仕様」として組み込まれています。
この本・アプリは、優しい顔をしてるけど、要所がちゃんと厳しい。
その象徴が 「2日未入力でリセット(あるいは継続するかの確認が入る)」という仕様です。
1日サボるのは誰にでもある。問題は2日目。
2日空くと“休むこと”が習慣になり、3日目から再開のハードルが一気に上がる。だからアプリは、2日目を越えさせない仕様となっています。
継続記録がリセットされる可能性を提示し、「このまま続けるか」をユーザーに突きつけて、ゼロの日の連鎖を止めにきているのです。
ここで重要なのは、この仕組みが「罰」ではなく、安全装置として設計されている点です。
忙しさやうっかりを放置して自然消滅する前に、“危険ライン”を見える化して引き戻す。
根性論ではなく、設計で人間を動かす。この思想が、アプリのUIにそのまま埋め込まれているのが素敵ですね。
この本を踏まえて僕が考えたこと
ここまでが書評パートです。
ここから先は「本に書いてある内容の要約」ではなく、上の3原則を踏まえて僕が考えたこと(習慣=環境の話/投資の比喩)を書きます。
そもそも習慣化には「2カ月くらい」かかる。できないのは人間の仕様
「習慣が完全に身につくまでの目安」は思っているより長い。
習慣が自動化(automaticity)していく過程を追った研究では、
自動化が落ち着くまで平均で約66日(=2カ月強)、しかも個人差が大きい(18〜254日)といった報告があります。
下記:参考文献
つまり、始めた直後に「まだ自然にできない」「やる気が続かない」と感じるのは、失敗というより人間の仕様に近いのです。だからこそ『継続する技術』が強調する「例外日でもゼロにしない」「思い出せる環境を作る」といった設計が効果抜群です。
2カ月という“長さ”を走り切るには、例外日でもゼロにしない仕組みが要る。
「自分は続けられない人間だ」という結論を出す前に、まず設計を変えることから始めましょう。
学校では続いたのに、大人になると続かない理由
多くの人が「昔は勉強や部活が続いた」成功体験を持っています。
でもあれって、意志が強かったからというより、下記のような強制力のある環境が、半分(いや大半)を肩代わりしているのです。
- 時間割がある
- 提出期限がある
- 先生がいる
- 同級生がいる
- 評価がある
大人になると、向上も堕落も自由になる。
自由って気持ちいい反面、続けるための外部装置が消えるんですよね。。
だから習慣化は、意志の修行ではなく、環境とルールの再設計になる。
似たお話でYouTubeのぴよぴーよ速報が出しているマルクス「勉強とか続かねえ奴はこうしろ」が示唆に富んでいます。
「個人の努力」だけで語りがちな問題を、環境・構造から見直す視点が取り出せます。
※次回、似た文脈の議論。ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』(パノプティコン=監視の条件設計)について紹介した記事を掲載予定。
1日5分を投資的な観点から考えてみる

1日5分を「時間投資」として見直していきましょう。
ここまでの話は「設計」でした。
ここからは、その設計を支える材料として「5分」という投入の大きさを、別の角度から見直してみます。
1日は1440分。5分はそのうち 約0.35%。
この数字は“成長率”ではありません。**毎日、未来に回せる投入比率(時間投資)**の話です。
そして、日次の5分は年単位に直すと物量が変わります。
- 5分 × 365日 = 1825分 = 約30.4時間/年
- 3年で 約91時間、10年で 約304時間
この時点で、少なくとも“ゼロ”から“年30時間”へ確実に移動している。
「5分は小さすぎる」とは、言いにくくなります。
ブログは「投入」がストックに変換される
もちろん、人間の努力は株式のように自動で複利成長しません。
でもブログは、投入した時間が成果物として残る領域です。ストック資産を積み上げることができます。
- 記事が増えるほど、内部リンクが増えて回遊が起きる
- 型が溜まるほど、執筆が速くなる
- ネタ帳が増えるほど、迷いが減る
- 過去記事が検索流入として働き続ける
つまり、毎日の投入(0.35%)が、ストック(記事・型・導線・検索流入)に変換される。
この“変換”が積み上がるほど、体感として成長曲線が寝ていたものから立ってくる。
これが、僕が「複利っぽい」と表現したい中身です。
金融投資との比較
ここだけ、比較のルールを一度提示します。
- 時間資本(自己投資):5分=0.35%/日 は “投入比率”
- 金融資本(投資):年利◯% は “リターン”
もちろん時間資本(自己投資)と金融投資を同列比較はできません。
ただ、投資の世界が「日次のごく小さな差分を積んで勝つ」世界であることを知ると、5分投入の“桁感”が掴みやすくなる。だからここでは、読者の感覚を揃えるために並べます。
例として、インデックス投資の年利5%をと仮定し日次(複利換算)に直すと、おおむね 約0.013%/日です。
(つまり金融は「0.01%台/日」を積む世界観になりやすい。)
参考:具体例として、三菱UFJアセットマネジメント の公開情報では、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の「過去5年 騰落率(累計)」が提示されています。
数字遊びにはなりますが、0.35%の自己投資をストック資産として重ねていった場合、下記のようになります。
- 単利:0.35% × 365日 ≒ 約126.7%
- 複利:(1 + 0.003472)^(365) − 1 ≒ 約254.4%
もちろん「人間が1年で2.5倍成長する」と言いたいわけじゃない。
0.35%を毎日切らさないだけで人生の景色が変わりうる。
だからこそ重要なのは、能力や根性ではなく——
この投入を切らさない設計(=習慣3原則)です。
まとめ:小さなことを重ねた人だけが、曲線を手に入れる
続かない人ほど必要なのは努力じゃない。人間の仕様なのだから、環境設計で解決をしていきましょう。
- 目標を5分に落とす(開始コストを消す)
- 動ける瞬間に呼び出す(IF-THENで予約する)
- 例外日でもゼロにしない(連続性を守る)
習慣化されたその先には、時間・自己投資がストック領域に入りは複利っぽく効き始めこともあります。
最後に、この言葉で締めて終わりにしていきます。
「小さなことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ一つの道」
── イチロー

